1997年04月08日
がけ崩れ・脱線
京急の脱線事故を伝える各新聞
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1997年4月7日 14:47 田浦-安針塚間のがけが崩れていたところに上り普通電車が突っ込み脱線した。乗客乗務員19人が重軽傷を負った。
この事故を1面カラー写真入で伝えた新聞も多く、人目をひいた。
新聞を読んでみるとそれぞれその扱いが異なっており、興味深い。ここでは 神奈川新聞・東京新聞・日本経済新聞・産経新聞・毎日新聞・読売新聞・朝日新聞の各紙の扱いに付いて比較をしてみたい。
神奈川 | 東京 | 日経 | 産経 | 毎日 | 読売 | 朝日 | |
事故発生時刻 | 14:45 | 14:45 | 14:43 | 14:45 | 14:40 | 14:45 | 14:40 |
地図 | 詳細 | 三浦半島 | 三浦半島 | 三浦半島 | 詳細 | 三浦半島 | 三浦半島 |
スピード | 速度も上がりきっていなかった | - | 80Km/h | - | - | 80-90km/h | 60km/h推測 |
写真撮影時刻 | 15:30 | 17時すぎ,17:30 | 午後 | 16時 | 18:14 | 16時すぎ,15:20 | 15:45 |
写真撮影場所 | 現地 | ヘリ,現地 | 現地 | ヘリ,現地 | 現地 | ヘリ,現地 | ヘリ |
対向電車 | 快速電車 | 特急 | 快速特急 | 快特 | - | 快速特急 | 特急 |
事故の発生時刻は生麦駅に張り出された急告によれば14:47。新聞各社は「..40分ごろ」、「..45分ごろ」という表現で、大体の時刻を示しており、それが10分刻みか5分刻みかの違いが出ているといえる。
事故の発生場所を示す地図は、神奈川新聞と毎日新聞は事故現場の割と詳細な(縮尺の大きな)図を示している。神奈川新聞は地元紙ならではの詳細な図で、1面掲載。毎日新聞は27面掲載で、図も神奈川新聞ほどの詳細さには欠ける。その他新聞は三浦半島を図示し、大体の位置を示している。
スピードはがけ崩れに突っ込んだときのスピード。東京・産経・毎日はスピードに関する表記はない。
神奈川新聞は
「脱線した電車は普通電車だったため、速度も上がりきっていなかった」と推測で、かつあいまいな表現。
日経は
「時速80キロで走っていて現場の約100メートル手前で、ちょうど土砂が崩れ落ちてくるのに気づいた。急ブレーキをかけたが間に合わなかった」と話したという。」と伝聞ではあるがかなり詳細な運転手の供述を記している。
読売は
「80-90キロのスピードで現場に差し掛かったところで土砂崩れが発生。」と日経の運転手の供述と事実関係は一致している。
朝日は
「速度は時速60キロ前後と推測される。」と速度を推測の上
「特急電車は..時速約80キロで現場を走っており、さらに大きな事故になった可能性がある。」としており、事故の大きさと電車のスピードに比例関係があることも推測している。
写真撮影時刻・写真撮影場所は各新聞の写真撮影時刻と場所。1面と社会面と両方にあって時刻が異なる場合にはその順に記してある。神奈川新聞が一番早く現場に駆けつけ、迫力のある電車前面からの写真を撮っている。車内の写真を載せているのは東京新聞(社会面)だけで、座席が取り外され(担架がわりに使われた?)細かいガラスの破片が散乱している状況を捉えている。ヘリコプターからの航空写真を載せているのは東京・読売・朝日で、その時刻は接近している。ほぼ同じ時刻に少なくとも3機のヘリコプターが現場上空を旋回していたことになる。
対向電車はこのとき、現場に差し掛かった下り快速特急をどのように表現しているかである。「快速特急」は京急独自の列車種別であるためだろう、朝日新聞・東京新聞は「特急」と表現。日経新聞・読売新聞はそのまま「快速特急」、地元紙の神奈川新聞は利用者の略称である「快速」電車と表現した。いずれも、見出しにあればその表現を優先して、なければ本文中から引用した。
事故現場は京急所有の急傾斜地。安全点検では「問題なし」との判定が出ていた個所での事故に、各新聞共に一様の問題点を指摘している。また、東京新聞では
「間一髪特急に警報 重傷運転士、二次衝突防ぐ」と重傷を負いながらも警報を発した運転手のことを別枠で取り上げている。また、各紙とも、乗客が携帯電話を使って119番を掛けたこと、親族知人に連絡を取り合ったことを報じている。
この事故の影響に付いては神奈川新聞が一番多くの紙面を割き、横浜駅・金沢文庫駅の混雑ぶりを伝えている。これに対して東京新聞では品川駅での混雑のみを伝えている。
(1997-4-8)
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