2004年01月12日

映画「七人の侍」(その1)

戦争に負けてなんと7年目に撮り始める映画。その脚本には2年かかったというから、すごいですねー。この映画「七人の侍」はもう、筋を追って、エピソードも入れて語ると半年はかかるから、そこははずしてお聞きの皆さんを映画館にお誘いします。さあ、皆さんは映画館に入って席に座りました。

と、こんな感じで語る武田さんの真骨頂。エピソードを入れずにといいつつも丸一ヶ月はかかるから、分割するんだと宣言して続きます。真っ先に観客が見せられるのが「犯人」たる野武士の一団。そして、その野武士の一団を見かけて怯える農民。農民の顔がアップになる。そして村へ。この流れで完全に観客は農民の側に絶ってこの映画を見ることになるわけです。

このあとも、農民の話し合い、そこにある何か得体の知れない恐怖の存在を何となく観客に感じさせながらも、農民とともに村を守ってくれる侍を探しに都へ向かう、その農民と観客が行動をともにします。

この黒沢映画のパンフォーカスでの映像の作り方、屋外ロケーションの場合には絵巻物のように左右に広く絵を見せ、室内の場面では奥行きを深くとってしかも登場人物全員に焦点が合っている。

黒沢映画の奥深いテーマがすでにここまでの「つかみ」で表現されていてそれは最後で判る、そういうテーマなんです。スターウォーズと違うのはそこなんです。

都でも農民たちは、侍から断られまくる。だめだ、だめだ。村で表現された絶望が再び農民の表情に表れる。観客も、もうこんな企ては無駄じゃいかと思い始める....そこに事件が起きる。

その事件は、強盗が追いつめられて逃げ込んだ納屋で子供を人質にとって立てこもるなんか、現在も起きているような事件ですが...その「犯人」を見事斬り殺す場面にはじめて スローモーションが使われる。活劇でスローモーションが使われた初めての例で、この短い時間を永遠の長さに見せる、そういうテクニックなんです。

さて、なんとか村を守ってくれる武士を見つけるが、村の様子を事細かに聴いたその侍は、無理な相談だと断る...が、そこに転機が訪れる。

(2004/01/12~16 放送)

Source

七人の侍(2枚組)<普及版>
発売日:2007/11/09

監督: 黒澤明

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(THE MASTERWORKSシリーズとは別商品です。)
日本映画史上空前の超大作。黒澤映画の金字塔。野武士が野盗化していた戦国時代を舞台に、貧しい百姓たちが侍を雇い、全力をあげて野武士の群から村を守ろうとする姿を描く。
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黒澤明と「七人の侍」
都築 政昭 (著)

Amazonの出版社/著者からの内容紹介
 日本映画史上の最高傑作と称賛される「七人の侍」を、豊富な資料をもとに、制作プロセスを忠実に再現し徹底検証。生前、監督本人が折に触れて語った創作秘話をベースに、その企画から完成までを、活気に満ちた現場の臨場感たっぷりに綴ります。当時のスタッフらによるエピソードや資料、貴重なメイキング写真など見どころ満載、公開から半世紀を経ても色あせることのない映画美に迫るドキュメントです。

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