2005年01月31日

私の体は頭がいい その1

内田 樹(うちだたつる) は合気道の達人。この内田さんの非中枢的身体論。人間の記憶はたかだか数十年。でも体は数十億年の記憶をもっている。いまの人間の体は脳を頂点にして動いている。

武道というのは頭を使わない体の動かし方だ。これが内田さんの非中枢的身体論。

もっともけがが多いスポーツの種類がある。それは
倒れてはいけないスポーツ=倒れれば負ける=怪我が多い 相撲・柔道・ボクシング
倒れてもいい=怪我が少ない サッカー・ラグビー

人間というのは二足歩行で歩き出したときから バランスを意識する。バランスをとろうとしていると怪我をする。そういうときには転んでしまえ。転ぶことを恐怖するが故に怪我する。脳から出る転ぶなと言う命令を聞くな。頭を使うな。転びそうになったらそのまま転べ。あとから脳で「転んじゃった」

日本刀を持って相手に切りかかろうとしたときに、道具に人間が操られる。ゴルフ道具を買うときだって、すでにもう道具に操られているでしょ。道具を持っていると道具に操られる。核弾頭つけたロケットを持ってりゃ大丈夫と、核弾頭に操られる国ってありますよね。核弾頭を持ってる国の態度ってでかいですよね。

目の前に敵がいる。刀を握ると相手より刀に人間が操られる。
妖刀村正..持った人が人を斬りたくなってたまらなくなる。
日本刀は修行しないと使えないんですよ。袈裟懸けに相手を斬ったりすると、その勢いで自分の膝頭を切ったりする。

道具はそれを持っている人間に謎を問いかけてくる。道具に依存する人間。道具が問いかけてくる謎に応えようとしなければならないよ。そうしないと道具を使いこなせない。当たって喜ぶゴルファーってだめよね。道具の自慢ばっかりするゴルファー。

ある種の節度を持って道具に向かう。道具の先にいるもの。日本刀の先にいるもの。敵 これが読めない。

敵の動きを読もうとすると「相手が主、自分が従」になる。憎むとはそういうこと。憎む相手が主になってしまう。斬るために相手に自分を会わせてしまう。どんなに早く反応動作をしても敵に会わせる以上相手を上回ることができない。

唯一の方法は脳への情報を最大限入れる。頭で考えないで入れた情報のまま、体の動くに任せよ。
山道を登って、汗だくで峠にさしかかる。そこにそよ風が吹くと人間は「ああー気持ちいい」と言ってしまうでしょ。風が吹く前に 気持ちいい というひとはいない。言葉は後からくるもの。それが非中枢的身体論。その涼風吹く顔で敵に向かえ。

舞台をやってて、一番くたびれるのは客ののりがいいとき。ほんのわずかずつりきむ。それで疲労の階段を上る。調子がいいときにはあまり考えることがない。考えると言うときには調子が悪いとき。調子がいいときに情報が開いている。だから調子が悪いときにも情報を開きなさい。

(2005/01/31~02/04 放送)

Source

cover 私の身体は頭がいい―非中枢的身体論
内田 樹 (著)

Amazonの「BOOK」データベースより
いま武道が熱い!日本最強“運”武道家の痛快エッセイ。武術とは、人間が本来もっている可能性を開花させて「よりよく生きるための技術」である。レヴィナスの研究者でもある著者の永年の修業に裏づけられた「身体の思想」。

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