2005年04月04日

ダ・ヴィンチ・コード

キリスト教の真実を明かすか隠すかといった問題小説。あるいはサスペンス=犯人捜しのおもしろさ。これは作者が映画化されることを意識している。車に乗るシーン(カーチェイス)が多い。これはアメリカで公開される映画の大事なシーン。

上巻はすごい思った。下巻では、もう私には犯人なんかどうでもよくなりました。上巻はまさに虚々実々取り混ぜてもう、上げ底もいいとこ。この小説にはちゃんとネタ本があって、それを元にサスペンスに仕上げている。

新約聖書はマリアばっかり

そう、○○のマリアというのがやたら出てくる。イエスを生んだおっ母さんがまずマリア。それからベタニアのマリア、マグダラのマリア。

源氏物語は、一人の男性「光源氏」がいろいろな女性と関係していく話だけど。これは元の話には、何人もの男がいてそれぞれの恋物語だったのを紫式部が、一人の男にまとめ話にしたものではないか。そうすればいろいろ納得がいく。紫式部は女性を描きたかった。紫式部はそういういろんな「女性」を持っていた。

そう考えていくと、新約聖書のいろんなマリアは実は一人の女性のいろいろな部分を分解して表現したものではないか。イエスのそばにいつもそういう女性がいたのではないかという仮説。

さて、その「ダ・ヴィンチ」。有名な絵は「最後の晩餐」。あの 寅さんの映画にも出てくる。「男はつらいよ」シリーズ中でも異色の作品。クリスチャンの純情おばさん(?)に恋をする。食事をごちそうになるがその場面にこの「最後の晩餐」の絵が飾ってある。寅さんの台詞が抱腹絶倒。

ところで、こういう映画を出し始めたということは..あのね。アメリカは時々不思議なことをやる。 映画「ゴースト ニューヨークの幻」、あれは仏教の世界観だよ。だって、死後49日は地上にとどまるわけでしょ。そして、四十九日の法要が終わったら天国に行く、あの光の行列は「弥勒菩薩」だよ。アシスタント:「私のゴーストのイメージががらがらと音を立てて崩れていくぅ!」それにほら、悪いことをした人が死んだとたんに時刻に引き込まれていくシーン。あれもキリスト教の世界じゃないよね。キリスト教の世界観は最後の審判が下るのをみんな待つわけでしょ。いきなり地獄に引き込まれたりしない。シックスセンス=これは「第六感」仏教の言葉ですよ。我々の世界観。女性が旦那の浮気を発見するときとかに使う能力ね。

さて、新約聖書の福音書はマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの4人の目撃談。でも同じ場面でも違ってるんです。そして弟子が13人いたのに4人だけというのも変。ほかにも福音書があってそれは現在でも発見され続けている。そういう中に 「マリアによる福音書」というのがある。

男性中心のキリスト教世界の終わり

アメリカはなんだかローマ帝国に似てますよね。アメリカが恐れていることがある。それは「戦争をやっている地域に、イエスのような人物が現れて、それを殺してしまったらどうしよう。」ということ。もし、ほんとにDNA解析がなされてイエスの直系の人物が判ってしまうと、怖いよね。 映画「パッション」あれを見てると「痛い」よね。あんなにむち打つシーンを長々とねちねちとやらなくてもいいのにと、思うでしょ。メル・ギブソンは「イエスを殺したのは誰だ!」と叫んで加害者に見せつけてやろうとしているんじゃないか。昔から受難を描いた絵画にもむごたらしい描写のものが多かったけど、そういう意味なのね。そして、それは現代にも重なってくるんだ。そのイエスを見守りながら端の方で悲しそうにしている「マリア」

さて、この「ダヴィンチコード」のような作品が世に出てくるということは、男性中心のキリスト教世界が転換点を迎えているという証ではないかと。マリアとイエスが夫婦である という考え方に変わっていく。「マリア」を描く描き方も時代によって変わってきた。

マグダラのマリアがいつの間にか「娼婦」として扱われるようになって、これが画家たちから大変な人気を博すことになる。何しろ裸の女性を描いても「金髪・ガイコツ」という条件を満たせば「マグダラのマリアです」ということで宗教画として通用してしまう。

そんなわけで、どこどこのマリアという言い方は日本にもあって、戦国時代。細川忠興に嫁いだのが逆臣明智光秀の娘「於玉」。彼女が堺に赴いたときに不思議な宗教と出会う。キリスト教で彼女は代理の洗礼を立ててキリシタンになる。洗礼名が「ガラシャ」。その美しさは「容貌の美しさは比べるものなく、精神活発にして鋭く、決断力に富、心情高尚、才知抜きんずる」(日本西教史 宣教師-クラッセ著)と評せられている。

ってなことを、大河ドラマの撮影後、酒酌み交わしながら、話してたわけですよ。私の横には細川フーミン。彼女が私にお酌をしながら一言。「私、ガラシャの血筋なんです。」ガーーンときたよ。

(2005/04/04~08 放送)
(2005/04/11~15 放送)

Source

cover ダ・ヴィンチ・コード(上) (角川文庫)
ダン・ブラウン (著), 越前 敏弥 (翻訳)

内容(「BOOK」データベースより)
ルーヴル美術館のソニエール館長が異様な死体で発見された。死体はグランド・ギャラリーに、ダ・ヴィンチの最も有名な素描“ウィトルウィウス的人体図”を模した形で横たわっていた。殺害当夜、館長と会う約束をしていたハーヴァード大学教授ラングドンは、警察より捜査協力を求められる。現場に駆けつけた館長の孫娘で暗号解読官であるソフィーは、一目で祖父が自分にしか分からない暗号を残していることに気付く…。

cover ダ・ヴィンチ・コード デラックス・コレクターズ・エディション
出演: トム・ハンクス, オドレイ・トトゥ 監督: ロン・ハワード

内容
世界的ベストセラー小説の映画化。監督は『ビューティフル・マインド』のロブ・ライナー、主演はトム・ハンクス、オドレイ・トトゥ、イアン・マッケラン、ポール・ペダニーと豪華な面々。映画は小説に忠実に描かれ、衒学的な原作の持ち味を損なわない知的ミステリーに仕上がっている。ふたりが謎を追って大移動するたびに、次第にひもとかれて真相に近づいていく様子は興味深い。またフランス、イギリスでの大がかりなロケ、ルーブル美術館内部の映像など、ビジュアルにも圧倒されるはずだ。(斎藤 香)

cover レンヌ=ル=シャトーの謎―イエスの血脈と聖杯伝説
マイケル ベイジェント (著), ヘンリー リンカーン (著), リチャード リー (著), 林 和彦 (翻訳)

内容(「BOOK」データベースより)
今世紀最後の「神」の謎解き!「神の謎」をめぐる一連のベストセラーの始祖、ファン待望の大著。南フランスの一寒村はなぜ有名な「ミステリースポット」となったのか。巨万の財宝、プッサンの絵の謎、メロヴィング王朝の正当血脈とは。

cover イエスの墓
リチャード アンドルーズ (著), ポール シェレンバーガー (著), 東江 一紀 (翻訳), 向井 和美 (翻訳)

内容(「BOOK」データベースより)
ヨーロッパじゅうを論争に巻き込むレンヌ=ル=シャトーの謎。19世紀、ひとりの神父に莫大な富をもたらした羊皮紙文書の秘密とは何だったのか?そこには、幾何図形によって地図上のある地点が示されていた。ロレーヌ公の著作、ルイ十四世所蔵の絵画などから次々と見つかる同様の図形。秘密の幾何学に関わった人々は、ローマ・カトリック教会から異端とされたグノーシス主義を信仰する集団だった。彼らが受け継いできた最も危険な知識―それは、イエスの復活を否定する「遺体」の行方だった。大胆な仮説と綿密な検証でキリスト教二千年の謎を解く。

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