2005年06月20日
勝つと思えば
「勝つと思うな」思えば負けよ 有名な歌の文句ですが、今週は「死と身体―コミュニケーションの磁場」
最近売れ出しましたよね。内田 樹さんの本。私もこのところ嵌っています。
内田さんは
負けているという状態 = 体にはいい状態だ
と言うんです。身体的にはいい状態=肩の力が抜け関節がもっとも柔らかくなっていて、もっとも動く瞬間だと。生物は危機的な状態になると「負けた状態」になる。
現代の運動は間違っている準備運動=あれは間違っている。勝つために準備運動するでしょ。すると勝ちを意識し始めた体はだんだん硬くなる。獲物を捕ろうとする前に準備運動をする動物は一匹もいない。突然いける。負けた状態からすとんといける。獲物を狩る前に準備運動やってる虎とかライオンとかいないでしょ。(笑)
かつての柔道は負けるところから練習した。ひたすら投げられる。やらわかい筋肉にして、それから投げる筋肉をつくりあげていく。合気道もそう。気を合わせる練習。気を合わせておけばはずすのは簡単だというんですね。これが=負けの練習。
ゴルフで OBのあと 何であんなにナイスショットが出たりするのか。
お客が入りの悪い舞台のとき妙にギャグが弾む。そこで弾まない人は向いていない。
お客の入りの悪かった舞台は後のネタになる。
真剣白羽取りってあるでしょ。子供の嘘みたいな技。もう勝てないというような状態から筋肉はもっとも柔らかくなるんですよ。頭で考えていることと体で考えていることはこれほど違う。
上野千鶴子:「援助交際はただではやらせないという点で、立派な自己決定だとおもいます。しかも個人的交渉能力をもっていて第三者の管理がないわけでしょ。あなたが私を自由にできるのは金を払っている間だけよ。これは幼いながらも見事な発言だと思うの。」
内田 樹:「自分の体に対する所有権を宣言するという上野の論理に対し、体への道具化は、脳は自己決定権に満足しているが、身体は意味のない道具であると言うことをここに宣言しているのである。脳が楽しむため体は犠牲になれという身と心のバラバラが上野千鶴子の意見である。」
ダイエット虚飾=体は怠けたがるこれを脳がひきしめる。そういう発想。「誰からも社会的賛同が得られないとき、自分で支配できるのは自分の身体だけである。自分の体を軽蔑し奴隷にすれば売春でも何でもできる。脳が楽しむためには体からの声を聴くな。と言う社会だ。」これは
援助交際・薬物依存・ピアス・タトゥ・のぞき・痴漢 まさにこういったことでしょ。
「あの娘のパンツ」..変態的に言ってみましたが(笑)。あの娘のパンツなんて存在しないんだよね。脱いでしまえばただの布です。
かっこいいから入れ墨をする・ピアスをする。痛いよねあんなの。これは感覚遮断=これが現代のかっこよさ。かっこいいから痛いのを我慢する。まさに体を道具と見なしている脳が支配している社会
脳を楽しませるには物語を作ればいい ところが できている物語を拝借する人がいる。アダルトビデオに出ているAVの女性を取材した本があるんだけど。彼女らは全部同じ物語を語る。脳は物語を作りたがる。戦争体験なんかそうだ。ものすごいむごい目にあったひとそんなモンじゃないと どんどん編集していく。そういうときにはよく擬音が入る。証言としては大切なんだけど、心して聴かなきゃならない。証言というのは非常に難しい。
感覚遮断ということ。脳は非常に貴重な臓器。ただし暴走するというんですね。
敬語は大事 感覚 敬語は危険なものから身をそらすことができる。「敬語や謙譲」は危険から身をそらす間=負けの状態を作る。敬語や謙譲語というのは文化や文明ではなく危険から逃れる能力=社会的訓練だと言うわけです。この内田さんの論理にははっとさせられましたねー。
言葉というのは 「肌触り」なんですね。たとえばある人がとても重篤な明日をも知れぬ命にあって、「私もうダメなんでしょうかね」と言います。このときその人をもっとも励ます言葉は次のどれか?
- 「がんばりましょう」
- 「心配しないで」
- 「弱音を吐くな!」
- 「痛みがあるんでしょ だからそういう気持ちになったんだ。」
- 「あー もうだめだと そういう気持ちになっちゃったんだ。」
Source
死と身体―コミュニケーションの磁場
内田 樹 (著)
Amazonの出版社/著者からの内容紹介より
武道から現代思想まで、「話を複雑にすることでわかりやすくする」ウチダ先生の、今度のテーマはコミュニケーション。
「どうして『死と身体』がコミュニケーション論になるの?」と疑問をもった瞬間、あなたは既にコミュニケーションの中にいる、っていう話です。
人がケータイを手放さずネットショッピングにはまるのは、それが5万年ぶりの沈黙交易だからだと喝破し(p.223)、なぜ「英霊を賛美」してはいけないかをレヴィナス、ラカンを引いて論を立て(p.228)――と絶好調。
「着眼点のとんがり具合は、ここ数ヶ月でいちばん」(04.6.24.Web日記)と自負する、著者新境地の一冊です。
このエントリーのトラックバックURL:
http://saiquet.sakura.ne.jp/8869/mt-tkereb.cgi/415