2007年03月08日

炎の罪 その4

記憶というのは、蓄えられているのではなく
思い出すときに再構成されるものなのだ。

テーマ曲 ♪

--年が明けた--
いよいよ忙しくなってくる。大学で面白い授業を受けて単位をとろうと思っても、夕刊の時間にあわせて帰らなければならないので、遅い時間の授業がとれない。これはつらい。そこで、大学2年への進級時、新聞配達を辞めることにした。立替入学金は払い終えたし、奨学金は取れたし。

純粋な意味での一人暮らしもここから始まった。豊島区千早町のぼろ下宿に引っ越したのだ。玄関を開けるといきなり階段、しかも靴はそこで脱いで、階段上の靴箱に入れる。部屋は6畳で、広さは今まで住んでいた3畳の部屋に比べると一挙倍増だ。

部屋には文庫用本棚、机、レコードプレーヤー付きラジカセ、冷蔵庫。6畳の部屋が広い。テレビがないので夜は図書館で借りてきたLPをかけながら図書館で借りてきた本を読んで過ごす。そろそろ裏の銭湯に行こうとしたときに、部屋の扉がノックされた。

「新宿署のものですけど、**さんですか」
「はいそうですが..」
「2年くらい前に大久保の**マンションで火災があったのをご存じですか。」

一瞬戸惑ったが、私とは別の世界で何が起きているか少し理解ができた。やってきたのは新宿警察署の刑事で、見かけはさえないオッサンという感じ。刑事といえば石原軍団の面々しか思い浮かばない貧相な想像力の持ち主はここで出鼻をくじかれたわけだ。

彼は私が火事を発見した当時の様子を詳しく聞かせて欲しいという。2年くらい前というのが一番思い出しにくい。しかも、学生当時はやりたいこととやってることが山ほどあって整理されていない記憶のがらくたを整理しながら何とか話す。

1時間ほど話をしてから、「又お話を聞きに来るかもしれません。どうも夜分スミマセンねー」と言い残して刑事が帰っていった。わたしは何か割り切れない思いながらも、裏の銭湯に行った。しまった、空いてる時間を過ぎてしまった。

混雑してる湯船につかりながら、自分なりに当時のことを思い出そうとする。なにしろあのときには、何度も配達の順路を変えていたし、朝と夕方でも配達の順序を変えてたから、頭の中は混乱していた。

そして数日後、夜、別の刑事が訪ねてきた。
新宿警察署へ出頭を要請された。

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