2007年10月17日

北九州の複々線を繙く その1

北九州市を東西に横断する鹿児島本線は、輸送力強化のために昭和40年代、貨客分離の路線別複々線とされた。 そのときの配線を調べてみる。配線図自体は1978年の図があるが、この図は直線と角角の折れ線で構成されており、さらにどれが本線なのか側線なのか、機関車引き揚げ線なのか安全側線なのかさっぱりわからない。しかもヤードはグレーで塗りつぶされているがそれと側線群の区別が定かでない。
おそらく、制作者の車窓・沿線目視と当時の地図を使いながら精度の低い水準に甘んじて作成されたものと思われるが、当時を知る資料はこれくらいしかないので、それを解読しながら、少なくとも本線と側線の区別をつけながら運用がわかるような形で引き写してみたい。

中間・折尾・黒崎 三角地帯

筑豊本線の複々線はいかに運用されていたのか

私は何度かこの区間が複々線であった時代に乗っているが、中間駅の配線はあまり記憶がない。こうして当時の配線を見て驚くべき事は、当時は、今日の電車線を複々線にするときのような常識が全く通用しない時代であったと言うことだ。
中間駅のホーム配置は「国鉄型配置」そのもので、その間に側線をおいて複線から複々線へ、香月線の出入りをこなしていることに驚く。

もちろん貨物列車優先であることは明白で、香月線専用ホームがない。若松方面への本線上に旅客ホームがない。若松・門司方面からの列車は同時に中間駅に到着できるようになっている。香月線列車は若松や折尾からの直通列車の方が多く、中間折り返しの列車が少なかったことも、この中間駅の配線から理解できる。
中間駅の配線を右から1番2番と(ホームとは関係なしに)番号を付けると、基本的には

  1. 本線下り・香月線下り
  2. 香月線 貨物上下発着線
  3. 本線下り・香月線上り
  4. 本線上り門司方面貨物 本線上り方面旅客
  5. 本線上り若松方面貨物
という使用法だったことが伺える。

折尾

国鉄時代から十字交差の代表的な駅としてよく鉄道の話題に取り上げられてきた。注目すべき点は筑豊本線が地上にあり、鹿児島本線が高架になっていること。明治24年8月30日に筑豊興業鉄道が若松-直方間に石炭輸送を目的に鉄道を敷設。ところが、高架の九州鉄道(=現鹿児島本線)は同年明治24年2月28日に先に開業しており、先に開業していたから地上という事情ではなさそうだ。..おそらくは地形などの技術的側面と政治的折衝との、二面からの歴史的考証が求められる事例となりそうだ。

いずれにせよ、現在も明治時代の煉瓦積みが残り、その高架下の高さがぎりぎりであり、筑豊線に架線を敷設する余裕がなかったことが、折尾-若松間を非電化のままの存置する要因となっている。その明治時代の煉瓦造りの通路や大正時代のルネサンス式の木造駅舎も、折尾駅の再開発に伴ってまもなく取り壊される運命にある。なお、JR九州はその保存に関しては消極的だと伝えられる。

1961年の鹿児島本線下りの時刻表。ここを見ると直方発博多行き451列車(気)という列車に気づく。この列車は折尾に停車している。この列車の存在から折尾に停車して博多方面へ抜ける線が、ある時期存在していたことが伺える。この図には折尾駅東方にグレーで示すような引き揚げ線があったと仮定してみた。東折尾貨物駅(現陣原駅付近)まで行って折り返すことも考えられるが、それでは遠すぎる。つまり中間駅を発車した451列車は短絡線→引き上げ線折り返しで→鹿児島線下りと走ったと考えるのが順当であろう。さてこの 博多-折尾-直方列車には逆方向の列車もあって(430列車)、これれも同様のルートを走ったのであろう。

もう一つのルートも考えられる。それは折尾駅北方から鹿児島線上り線につながる短絡線の存在だ。鹿児島線の輻輳を避けようと思えば、本線横断はしたくない。そうすると430列車は鹿児島線上り線から折尾駅手前で筑豊線上り線にいったん入り、そこでスイッチバックをして筑豊線下りホームに入ってもおかしくない。そこで時刻表を改めて確かめると、どうもこの第2ルートではないようだ。鹿児島線上り線のほかの列車は 遠賀川-折尾間を約6分で走行している。もし430列車がこの第2ルートを通ったならもっと時間がかかっているはずだ。しかしやはり430列車も他の列車と同様6分で走行しているので、鹿児島線上り線に到着していると考えるのが妥当だろう。7分の停車時間は鹿児島線の下り列車が空く余裕時間と見ることができる。

東折尾貨物駅、および黒崎駅西方の複線同士のの綾織りあたりまでは、古くからあったと思われる。東折尾駅の南方に多数の短い引き上げ線があるのは、機関車をここに多数待機させておいて東折尾で仕立てる列車の牽引に当たらせたのだと思われる。

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