2008年04月01日
サリエリの教科書的ピアノ協奏曲
サリエリと言えば映画「アマデウス」でモーツァルトの敵役としてF・マーリー・エイブラハム(F. Murray Abraham)演じる役所が印象的な人物だ。この映画ではもちろんサリエリが主役...と言うか狂言回しのような役で、モーツァルトは回される方だ。エイブラハムのサリエリの役作りはナイーブで権力志向、誰よりも音楽を理解できながら、作曲の才能には(モーツァルトに比べると)恵まれていない、そういう相反する部分を持ち合わせたモザイク模様な性格が良く出ていてすごく良かった。
この映画をきっかけに、サリエリの作品がCDにもなるようになってきたが、今回取り上げるのアンドレアス・シュタイアー(Andreas Staier)、コンチェルトケルン(Concerto Köln)の演奏。2007年の録音でなんとダスアルテヴェルク(Das Alte Werk)シリーズ..まだ続いていたんだ。このシリーズは古楽が全くのマイナー路線であった頃からドイツ・テレフンケン(Telefunken)が当時の若手古楽奏者達を起用して、過去の名曲を発掘していったシリーズ。アーノンクール・レオンハルト・ブリュッヘンといった現在の巨匠達を排出した名シリーズだ。
その、シリーズでシュタイアーとコンチェルトケルンが演奏するとなれば、少々駄曲でも聴けるかな..と思った。まあ、はっきり言ってサリエリの作品は総花的で一貫性に欠ける..と言いたいところだが、それぞれのテーマ、テーマの処理の仕方などはやはりベートーベンやシューベルトを門下生に持つだけのものはあると言いたい。だが、良い教師=良い作曲家でないことはやはりしようがないのかなー。
シュタイアーのおもしろさでなんとか各テーマを"hooked on"できるのだけど、それは演奏に集中しているとき。音楽は集中して聴けよ といわれそうだけど、たとえば、こうして文字を打ちながら聴いているといつの間にか話題が変わっているような感じがして、その話題に関連性がないというようなそんな印象だ。演奏会場では他にすることがないから音楽に没頭することになるのでこれでいいのかもしれない。逆に、音楽に「粘り」と「伝搬性」のあるモーツァルトと比べる方が間違ってるのかもしれない。
Salieri Steffan
Concertos for fortepiano
Andreas Staier Concerto Köln
Teldec 2564 69855-2
サリエリ・シュテファン
ピアノ協奏曲集
アンドレアス・シュタイアー コンチェルト・ケルン
一緒に録音されている「シュテファン」のほうがおもしろいかも..いきなりアダージョで始まる協奏曲にはバロックを聞き慣れた耳には奇異に映るかも..ベートーベンのような とあえて言ってしまえばそうかもしれない。いずれにしても、J.C.バッハのような平明で笑える音楽とエキセントリックな演奏を期待したのは、私の間違いだった。もっと奥の深いアルバムだったのだ。暫く寝かせておくことにしよう^^;
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