2008年04月02日

鉄道新線計画のその後-北海道・東北周辺

川島令三氏の鉄道著書には大きく影響を受けている。特におもしろいのは川島氏の将来予想だ。将来予想にはつきもののやや勇み足もあり、見当違いも当然のことながらでてくる。そこで昔の著書をここで引っ張り出して、2008年4月時点で実現しているかどうかを検証しようというわけだ。この記事は氏へのオマージュである。

検証する本は どうなる新線鉄道計画 東日本最新版―これから開通・延長される計画路線の全容〈’97〉 だ。この本で示されている新線計画はもちろん氏の独断ではなく、当地の自治体や地元有志から発案されているものだ。この記事では北海道・東北周辺を扱う。

No.計画新線○×考察
1札幌地下鉄延長線 東西線:琴似-手稲東(当時=現宮の沢)→開通
東豊線:福住-北野→未開通
東西線延伸は着工しているが、東豊線は当分の間着工しないと予想している。その意味では「アタリ」。
東西線開通当時の国鉄線は運転本数が少なく不便で、地下鉄で札幌都心へ直行することで乗客を集めたが、JR発足後状況が変わってダイヤが便利になった。地下鉄運賃が高いこともあって、乗客は伸び悩んでいる。ゴムタイヤ式の電車ではJRへ直通はできないが、せめてJR手稲延伸の際には、手稲駅を2面4線式に改良して、中2線を地下鉄線にして乗り換えを便利にすることを提案している。
そのほか、真駒内から定山渓方面へ旧定山渓電鉄の敷地後を利用しての延伸等も提案している。
2札幌市電の延伸× 西4丁目-すすきの→未開通
西4丁目停留所 とすすきの停留所は近いので、この間をつないで環状線にしようという案。この後、単純につなぐのではなく札幌駅方面への延伸やトランジットモール化などの提案が地元から出されている。 本書では地下へ潜って地下鉄との乗り換えを便利にすることを提案している。
○参考サイト:【札幌LRTの会】~札幌市電・路面電車・LRTと都市交通~ Sapporo LRT Society
3手宮線(小樽)のLRT化× 南小樽-小樽交通記念館(手宮)→未開通
旧手宮線は、全線が手つかずのまま残っていたので、そこをLRT化して電車を走らせようという地元市民団体からの提案。
本書では電化するには無理があるからレールバスではどうかと提案している。
実際には当面の活用としては、将来の輸送機関としての可能性を残しながら、オープンスペースとして活用を図る方向で検討を進めるとされ、遊歩道=オープンスペースとして整備された。
○参考サイト:旧手宮線跡地活用調査検討結果編(要約版)
4北海道リニア× 札幌-新千歳空港→未開通
リニアモーターカーの実験的営業線として北海道が誘致していた。札幌の空港連絡線として建設し、後に本州へとのばそうという目論見だった。しかし、北海道新幹線が最高速度350km/hで走ると東京-札幌間を3時間台で結ぶことがわかり北海道のリニア熱は急速に冷めていった。
5北海道新幹線×

新青森-札幌→未開通
2005年に新札幌-新函館(現渡島大野)間が着工された。本書では「基本スキームさえ発表されていないが、漏れ聞こえてくるルート」として、現計画ルートそのものが記されている。行政サイドから川島氏にリークされていたと思えるが、それだけに川島氏の情報ソースは確かな部分を押さえていた証左でもある。
○参考サイト:北海道新幹線のページ(新幹線対策室)
6東北新幹線延長線 盛岡-新青森→一部未開通
盛岡-八戸間は2002年に開通。八戸-新青森間は工事中。本書ではとにかくミニ新幹線でもいいから青森までの早期開通を提案している。実際にミニ新幹線の話が出たときに、地元では「ウナギを頼んだらアナゴが出てきた」と揶揄されたという。
7仙台地下鉄東西線と南北線の延伸×

東西線→全線未開通
南北線:泉中央-泉ヶ丘→未開通
東西線はリニアモーター方式のミニ地下鉄で着工済み。2015年開通予定。
南北線延伸は未着工。本書ではどちらもLRTで整備することを提案している。
○参考サイト:仙台市 地下鉄東西線なんでもサイトトップページ
8仙台空港アクセス線 仙台空港鉄道:名取-仙台空港→全線開通
2007年に開通。全列車が仙台まで直通運転している。途中駅の利用者によって、開通前のリムジンバスの輸送人員よりも利用者は多くなっている。
○参考サイト:仙台空港鉄道株式会社 [Sendai Airport Transit Co.,Ltd.]
9新幹線の新潟空港延長× 新潟-新潟空港→全線未開通
現在の車両基地から新潟空港まで延伸する構想。ただし乗客需要は不透明。着工はおろか貨物線の流用案やLRT整備など様々な大安があって検討段階にとどまっている。本書でも新潟臨港貨物線に新潟駅からの短絡線を接続の上、経由地の東新潟港にフェリーターミナルを整備してそれぞれの施設へのアクセス線とすることを提案している。
10わたらせ渓谷鐵道延長線× 間藤-足尾本山→未開通
足尾銅山を観光施設化して当該区間の旅客化を図る予定であったがバブル崩壊によって観光開発は頓挫。現在に至る。
本書では思い切って中禅寺湖への開通や、周辺観光地との連携によって活性化を図ることを提案している。
11埼群軌道新線× 埼玉と群馬を結ぶ鉄道→未開通
具体的には、かつての東武熊谷線を延伸、小泉線と接続するものであった。しかし、東武は高崎線へ自社利用客が流れるのを懸念し延伸を断念。熊谷線も廃止された。周辺市町村も建設促進の活動を行っていたが次第に消極的となり現在は立ち消え状態となっている。
本書ではHSST、ガイドウェイバスなどの当時検討された方式よりも、新宿方面への直通列車を走らせた方がよいと提案している。

Source

cover どうなる新線鉄道計画 東日本最新版―これから開通・延長される計画路線の全容〈’97〉
川島 令三 (著)

Amazonの「BOOK」データベースより
本書は、全国の鉄道新線計画を整理して紹介し、得失まで踏み込み、意味のある路線なのかどうかを吟味することを目的とした。構成として、最初に計画経緯、次に「建設概要」、そして「どうなるどうする」の3項目に分けた。計画経緯、「建設概要」、はできるだけ忠実に現計画を元にして想定するが、「どうなるどうする」では著者自身の鉄道に対する持論を元にした提言を主に述べた。

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