2008年04月03日

鉄道新線計画のその後-茨城・千葉方面

川島令三氏の鉄道著書には大きく影響を受けている。特におもしろいのは川島氏の将来予想だ。将来予想にはつきもののやや勇み足もあり、見当違いも当然のことながらでてくる。そこで昔の著書をここで引っ張り出して、2008年4月時点で実現しているかどうかを検証しようというわけだ。この記事は氏へのオマージュである。

検証する本は どうなる新線鉄道計画 東日本最新版―これから開通・延長される計画路線の全容〈’97〉 だ。この本で示されている新線計画はもちろん氏の独断ではなく、当地の自治体や地元有志から発案されているものだ。ここでは、首都圏のうち茨城千葉方面の案を取り上げた。

No.計画新線○×考察
12常磐新線 首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス:秋葉原-つくば→全線開通
構想当初は通勤新幹線として最高速度160km/hで走り、新幹線車両並みの大型車両を使って、着席通勤を目論んでいた。しかし、沿線自治体が個別に開発構想をつくり、高速新線という側面は薄れてしまった。しかも個別に開発構想を作ったために駅は30以上も作られそうになったという。その後、いわゆる「常磐新線法」によって、沿線開発と新線敷設を一体的に行うこととされた。
本書では開通前とはいえ、かなり具体化された時点での計画を扱っているためほぼ現状と同じだ。ただ、車両に関しては長距離は3扉、近距離は5-6扉、いずれもオールクロスシート車になると予想している。しかし、実際にはすべて4扉車、クロスシートは一部の車両に設置されるにとどまっている。
又、本書ではつくばから土浦方面へ延伸して、常磐線特急の乗り入れで、常磐線の逼塞を救済することや、秋葉原から新宿方面への延伸も提案している。
○参考サイト:TSUKUBA EXPRESS|つくばエクスプレス
13北総開発鉄道 印西牧の原-成田空港→一部未開通
印西牧の原-印旛日本医大(計画時には 印旛松虫)は2000年(平成12年)7月22日に開通。印旛日本医大から成田空港方面は工事中。2010年開通予定。現工事区間は長い間事業主体が決まらず宙に浮いた状態だったが、第三セクターで「成田高速鉄道アクセス株式会社」が設立され建設を行うことになった。開業後は当該区間を含め京成電鉄が第二種鉄道事業者として運行を行う予定だ。
本書では、成田空港側が単線運行されることを懸念している。三線区間、信号方式を統一の上、複線扱いの運用にすべきと提案している。また都心側では都営浅草線分岐線を東京駅へと接続することなどを提案している。
○参考サイト:成田高速鉄道
14千葉県営鉄道北千葉線× 本八幡-小室→全線未開通
都営新宿線の延伸として千葉県が県営鉄道として計画していた。県営鉄道による鉄道建設については地元への説明が足りない、用地取得に不正疑惑が持ち上がるなど紛糾し、結局当該区間は凍結された。
今後、県営鉄道として建設するのでは資金的に難があるため、第三セクターによる建設が画策されているが、現在に至るまで開通していない。現在では線名も北千葉線から「東京10号線延伸新線」と変更されている。現状、競合線となる北総線の利用者も伸び悩んでおり、本線の開通の見通しは立っていない。
本書では成田空港アクセス機能も併せ持つことを提案している。
○参考サイト:千葉県内の鉄道整備計画(東京10号線延伸新線(北千葉線))
15千葉急行電鉄× ちはら台-海士有木→未開通
元は、小湊鐵道が千葉方面延伸を目論んで取得した免許を京成が譲受して設立された第三セクターが千葉急行電鉄だった。本書が書かれた当時すでに債務超過に陥っており、1998年会社は精算され、路線は京成に譲渡され千原線となった。海士有木方面への延伸は現在も凍結中だ。
本書では海士有木まで開通の上、小湊鐵道・いすみ鉄道を改軌電化して房総半島横断鉄道として観光開発、都心からデラックス特急を走らせることを提案している。
16芝山鉄道 東成田-芝山千代田→開通
2002年10月27日に開通。本書が書かれた当時は、芝山千代田は「整備場前駅」とされていた。地下区間では未取得用地を避けてカーブしている箇所がある。
本書では九十九里方面への延伸を提案している。
○参考サイト:芝山鉄道
17千葉都市モノレール 千葉-県庁前→開通
本書が書かれた当時の工事線区間が開通したのみで、その後の延伸は行われていない。県庁前から先の延伸は千葉大学を経由して市立青葉病院まで建設することが検討されている。
本書では2号線スポーツセンターから分岐して稲毛方面へ延伸する計画について触れている。
○参考サイト:千葉モノレール
18第2東西線× 現東西線の混雑緩和をする線→未開通
営団地下鉄は東西線の混雑緩和のために西船橋からのバイパス路線を検討していた。
本書では浦安以西の区間を複々線化し、東洋町付近で有楽町線分岐線と接続することを提案している。
21東京ディズニーランド循環新交通 リゾートゲートウェイ・ステーション-リゾートゲートウェイ・ステーション(単線循環)→開通
本書発行時には「何も決まっていない」状態だったが1998年着工2001年に開通している。片方向の閉塞装置を設けるだけでよいとして単線ループを提案している。路線規格についても「思いっきり遊びのある楽しいものでいい」と提案している。実際ミッキーマウスをモチーフにしたモノレールが反時計回りに単線ループ運転している。

Source

cover どうなる新線鉄道計画 東日本最新版―これから開通・延長される計画路線の全容〈’97〉
川島 令三 (著)

Amazonの「BOOK」データベースより
本書は、全国の鉄道新線計画を整理して紹介し、得失まで踏み込み、意味のある路線なのかどうかを吟味することを目的とした。構成として、最初に計画経緯、次に「建設概要」、そして「どうなるどうする」の3項目に分けた。計画経緯、「建設概要」、はできるだけ忠実に現計画を元にして想定するが、「どうなるどうする」では著者自身の鉄道に対する持論を元にした提言を主に述べた。

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