2007年08月17日
北九州の複々線 新案その1
方向別複々線にする意義
北九州市を東西に横断する鹿児島本線は、輸送力強化のために昭和40年代、貨客分離の路線別複々線とされた。工業地帯である沿線には貨物専用駅が多数存在し、またそのための多くの貨物列車が設定されていた。貨物列車スピードが旅客列車に比べれば格段に落ちていた当時は、路線別の貨客分離こそがこの区間を複々線化する最適解といえた。
しかし、貨物輸送の比重が下がった今日でも、複々線は貨客分離の路線別複々線のままとなっている。 そのため、ガラガラの貨物線を横目に、びっしりダイヤの詰まった旅客線とアンバランスが生じている。そこで、折尾駅改造を契機に、折尾-門司間を現在の設備を生かしながら方向別複々線にする案を考えてみる。
方向別複々線にする最大の利点は、実質貨物線の線路容量を旅客列車が使うことが出来るようになることだ。速い列車と遅い列車を、方向別複々線の内外に振り分ける(緩急分離)ことによって、遅い列車も駅で追い越され待ちの時間をかけずに済む。複々線区間の適当な場所に内外を行き来できる渡り線を設置すれば、走行しながらの追い越しも可能となる。今日、貨物列車のスピードも十分速くなり、速い貨物列車は急行線を走ればよい。速い列車も遅い列車も互いに相手を意識しないダイヤ編成が可能と言うことだ。
緩急分離によって各線の列車スピードがそろうということは、「平行ダイヤ」を組めるわけで、これは列車の運転間隔を詰めることが可能になる。この区間を緩急分離の方向別ダイヤ編成で、物理的な線路容量は2倍となるが、ダイヤ編成上の容量は2倍以上になるとも言える(※この点に関しては様々な議論があるようだ)。もっとも、この北九州のこの区間が実際の運用上2倍以上の輸送力を必要とするかどうかは疑問で、むしろ、今回の方向別複々線案の本当の狙いは、列車本数を増やしても優等列車を速く走らせるためと理解するのが適当かと思う。
内急外緩案
この複々線案を「内急外緩案」と名付けた。優等列車優遇の案だ。内側線を急行線、外側線を緩行線とする。各駅停車のみのローカル駅のホームは線路外側に張り付く形になり、線形に与える影響が少ない。方向別複々線の場合、内側線の線形が良くなる傾向にあり、ここに優等列車を走らせるわけだ。この案では、優等列車の始発のため、折尾の東方に引き揚げ線を設けてみた。
逆に、この区間でローカル列車の折り返しをしようとすると、内側線を横断しなければならず、優等列車の運行に影響を与える。
当然、この逆の「外急内緩案」もあるので、これとの比較についてはページを別途設ける。
前提条件
この案についてのいくつかの前提条件を挙げてみると、
- 門司駅で機関車の交換をする旅客列車は走っていない。
- 九州新幹線が全通し、博多駅で山陽新幹線と直通運転をしている。
- 新下関での新在直通設備、および新在直通特急車両が完成し、日豊線からの新幹線直通列車が新下関まで在来線を走り、新下関から新幹線を経由して新大阪まで運行されている。
- 前項の新在直通特急の一部は鹿児島本線方面へも運行される。
- 日豊線方面特急には山陽新幹線直通特急が併結されている。小倉駅で分割併結を行う。
- 関門都市圏が県境を越えての合併が決定し、都市圏内直通列車の拡充が求められている。
- 貨物列車の取り扱いは北九州貨物ターミナルに集約されている。門司機関区は大幅に縮小され、貨物ターミナル駅構内にある。また本州との直通貨物列車は機関車牽引のほか高速貨物電車も本格導入されている。
内急外緩案の考え方
- 優等列車のために方向別複々線にするという基本発想。 内側線は「駅を通過する列車」が走り、外側線は「各駅停車」が走る。方向別複々線は各駅のホーム配置により、内側線の方が線形が良くなる傾向にあり、こちらを優等列車が走行するというもの。 ただし、小倉-門司間においては別途記述する。
- 各駅停車のみ止まる駅は外側線のみにホームを設置する。
- 折尾駅は現計画のまま完成している。ただし博多方面からの線路が内側線となるような配線をとる。
- 陣原-黒崎間の「綾織り」は解消されている。
- 黒崎駅の2面ホームはそのまま利用するも、現筑豊線ホームは優等列車停車のための延長とホーム設備の拡充を図る。
- 八幡駅、スペースワールド駅の2面ホームは複々線の各線に対面するよう配線を変更する。
- 現枝光駅の上り線ホームは閉鎖する。現貨物線上り線の位置に新ホームを建設する。このため枝光駅は上り線と下り線が別駅になる。
- スペースワールド-戸畑間は現貨物線が海側を迂回しているが、これをこのルートのまま上り線として使う。ただし高速列車のための路盤強化や、振り子列車のためのカント見直し、緩和曲線の追加など高速運転可能なように工事を行う。
- 現戸畑駅の貨物線側ホームをリニューアルして再利用する。
- 九州工大前駅は現ホームを壊して線形を直線にする。外側緩行線に対面ホームを設置する。
- 西小倉-小倉間の日豊線と鹿児島線の間にもう1本線路を敷いて西小倉駅の現3番線を経由して鹿児島線下り方面に接続する。
- 博多→小倉→日豊線と折り返す列車のために高架渡り線を新設する。これによって当該折り返し列車の発車が他線列車に影響を与えることを極力抑えられる。
- 小倉-門司間は3複線とし、最内側が北九州貨物ターミナルへとつながる。旧東小倉貨物駅付近を整理して、旅客線にホームを設置し、東小倉駅(仮称)を新設する。
- 3複線のまま門司駅へ接続し、最内側が関門トンネルへと向かう。交直流の区分は図のように行う。
マニアックな見どころ
堅苦しい話は、この程度にして、この案の見どころとしての第一は、やはり列車併走だろう。現状では線路容量が足りず、黒崎で折り返している筑豊線の列車が小倉方面まで運転されることになり。鹿児島線の快速と併走し、停車駅を千鳥配置にすれば速達性と利便性が同時に上がる。また、本州から乗り入れてくる長大貨物列車を、ソニックやかもめなどの特急がぐいぐいと追い抜くのも見どころの一つだろう。
もう一つの見どころは小倉→西小倉の高架短絡線だ。ソニックが日豊線方面へ折り返すときにここをぐんぐん登って新幹線と同じ高さにあがった後、一気に下るのはなかなか良い見どころになるだろう。
あと、小倉駅での同時発車もきっとあるだろう。小倉駅でキリの良い発車時刻にするような列車同士が同時発車ってことになるだろう。
折尾始発の新幹線 これもJR九州のウリになるかもしれない。たとえばこんなダイヤを想定してみたい。新大阪始発で「鹿児島中央」「折尾」行き新幹線特急。新大阪を発車すると「のぞみ」停車駅に止まった後、新山口で分割する。鹿児島中央行きが先に発車した後、折尾行きは(新幹線)厚狭、(新下関で在来線に降りて・新下関は通過)、下関、門司、小倉、戸畑、黒崎、折尾 とこまめに停車していく。山陽主要都市と大阪へ小倉で乗り換えの手間をかけることなく直通できるのは魅力だ。
JR九州にしてみればお荷物になりかねない「関門トンネル」が特急料金を払って乗るお客が大勢通る主要路線に返り咲くし、またJR西日本にとっても、下関からのお客が直接新幹線へ行ける点はプラスの宣伝材料となるだろう。
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