シオン賢人議定書 談録裁講

シオン賢人議定書というのはユダヤ陰謀史観に必ず登場する歴史的偽書で、革命後のフランス及びヨーロッパ諸国の混乱を背景にロシアで発表された。内容はユダヤ人が世界を裏面から支配するための計画が記されてることになってる。

最初にこの「議定書」が公表されたのは1903年、ロシア・ペテルブルグの新聞「軍旗」(ズミアナ)紙上であった。1905年にはロシア政府の検閲済み公式本で「人類の悪の根元」というタイトルで刊行された。後にこの本は版を重ねるがタイトルは変更され「人類の敵、シオンの中央書記局の機密文庫から持ち出された議定書」となる。また、同様の内容で「卑小なるものの中の偉大、緊急の政治的機会としての反キリスト」として、赤十字支部の後援で出版されたものもある。いずれもロシアで流布し、最終的には皇帝や教会の手に渡り、その後ロシア全土に広まることになる。それは当時の帝政ロシアでは国家の政策として反ユダヤ主義を標榜していたことによる。異教徒で少数者へのユダヤ人への憎悪をあおることで、国内の階級対立をうやむやにしようという目論見があった。

ただし、フランスではロシアで出版される50年以上も前に、「ユダヤの民の神秘」という本の最後の章にはイエズス会の悪魔的な計画が最終的には犯罪に繋がるものであることが事細かに説明され、後にロシアで出版されることになる「議定書」がそっくりそのまま掲載されている。

このことから、ロシアで「公表」されたものは、このフランスで出版された本「ユダヤの民の神秘」を丸ごと引き写したものであるといえる。事実、この「議定書」の内容において指摘されている社会問題は19世紀末のフランスで実際に問題となっていた。

一方、日本におけるユダヤ陰謀史観の立役者は酒井勝軍であろう。アメリカ留学中に著しい人種差別を体験した酒井は、本来博愛平等であるはずのキリスト教徒である白人が揃いも揃って差別主義者に成り下がったのはなぜか。それはユダヤ人の陰謀のせいだというアメリカでの聞きかじりがもとだった。こんなはずはない、日本人こそ「正しいユダヤ人」(なんじゃそりゃ)である、というねじ曲がった「日猶同祖論」がここから生まれてくるが、これについては他日に譲りたい。

日本にユダヤ陰謀論が本格的に入ってくるのはシベリア出兵によって「本場」の陰謀説が入ってくることによる。帝政ロシアの反ユダヤ政策によって件の「議定書」は一兵卒に至るまで配布されていた。これが日本軍部の目にとまり、なかでも陸軍将校の四王天延孝などは、陸軍きっての反ユダヤ主義者として名を馳せる。

戦後、GHQの統制によってこうした文書は鳴りを潜めるが、児童もの文学(?)などには如実に影響を及ぼしている。いわゆる「陰謀団VS正義の味方」の図式で、古くは「黄金バッド」から「レインボーマン」(死ね死ね団というのがキッチュで面白かった)、現在では「仮面ライダー」に至り、今日までその流れは絶えることがない。

この議定書は字句の置き換えでどのような体裁にでも変更可能である。たとえば、「儂ら」を気にくわない政治団体や宗教団体に、「朕」をその首魁に置き換えるといったことで、この「議定書」はそれらの団体が巡らしている陰謀であると中傷することに使える。20世紀初頭でロシアが行った手法である。現在でも、この議定書は「偽書であっても内容は本物」との主張もあるが、これは次のヒトラーの言葉で要約できる。「そこに書かれている内容はユダヤ人を説明するのに適している」 「プロトコルには多くのユダヤ人が無意識に行っている行為が、ここでは意識的に明示されている」 「プロトコルが偽書? それがどうした? 歴史的に真実かどうかはどうでもよい。内容が真実であれば、体裁などどうでもよいのだ。」

つまり、「ユダヤ人が考えそうなことだから、この議定書はユダヤ人が書いたものだ」と。

そんな歴史もあって、世間にはこの「議定書」を真に受けて、ユダヤ人陰謀側に荷担しようとする者、逆に殊更に反発する者多く、さらに、陰謀団を自覚する連中にはこの「議定書」の文句を一部すり替えただけの理念を掲げる集団も少なくない。そんな連中もすべてこの「シオン賢人」に言わせれば、本人達は気づいてはおらぬが実は「送り込まれた仲間」であり、「シオン賢人」の世界支配の一端を担っておるのじゃっちゅうことになるのだろう。

実際には、この議定書の内容は支離滅裂で、たとえば自らの支配計画を掲げながら(戦略)一方でそれを台無しにする方策(戦術)を誇らしげに語っていたりする。戦略をぶちこわしにする戦術を得々として語っていることを考えてみても、結局、この「シオン賢人」には「ウスラトンカチ」というルビを振るのがふさわしく思える。

ここでは、その尊大な間抜け面を晒すにふさわしい言葉を選んで録裁した。内容は難解に思えるがなれてしまえば極めて面白く、陰謀好きには堪らぬ話題を提供しておること請け合いでじゃろうて。

ただし読み続けるのは疲れるぞよ(^_^;;

2001年07月19日

議定  1

政治的自由は単なる思想 選挙によって支配者が取り替えの利くものと人民に思いこませるの議  美辞麗句はさておいて、ひとつひとつの思想の意味を語ろうと思うのじゃ。儂らを取り囲む諸事実に比較と推論の光をあて... 続きを読む

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2001年07月18日

議定  2

人民の世論を創り出す強力な力 同胞の苦難を敵対するものに直面させてその同情を買う。犠牲は大きいが効果は千倍という理屈  儂らの目的には戦争は欠くべからざるものなのじゃ。が、できる限り、戦争が領土的な利... 続きを読む

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2001年07月17日

議定  3

自由は闘争を生む 自由主義を鼓舞し新聞を使って人民をたき付け革命を起こさせるの議  今日、儂らはあと数歩で目標に到達せんとしておると言ってよい。横切るべき空間はあとわずかを残すのみであり、儂らが歩んで... 続きを読む

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2001年07月16日

議定  4

平等思想は自然法則に悖る 畜生共の関心を自由主義すなわち利益追求のみに向けさせ、結局儂らの支配におこうという議  如何なる共和国もいくつかの段階を経るのじゃ。その最初は、かなたこなた、右に左に攪乱され... 続きを読む

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2001年07月15日

議定  5

王は我によりて支配する 国家機構のエンジンとは・・金なのじゃ。  見せ物団体、言説混乱による疲労困憊、いたる所で腐敗が広まっておる社会、富者だけが詐欺同然の悪賢い奇策に富んだ社会、たるみ切った社会、道... 続きを読む

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2001年07月14日

議定  6

奢侈に対するあくなき欲望 投機は産業に平衡力をつける役割が有る  儂らは近く巨大な独占を確立し始めるじゃろうて。それは畜生共の巨万の富がすっぽり入るような、並外れた富の貯水池なのじゃ。政治的破滅に続く... 続きを読む

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2001年07月13日

議定  7

軍事力増大と警察力強化 外交官は言行一致してはならぬ。  軍事力増大と警察力強化・・この二つを欠いては、前述の計画を完成させることは全くできぬ。儂らの到達目標は、儂らを除いては、世界のすべての国家に... 続きを読む

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2001年07月12日

議定  8

万事は金で解決がつく 儂らの特別な教育機関で特別教育  儂らは、敵対者が儂らに向って使いそうな武器をすべて備えていねばならぬ。儂らは、常軌を逸しておると思われるほど大胆かつ不正な裁定を下せねばならぬ場... 続きを読む

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2001年07月11日

議定  9

全世界の国々が拷問を受けておる 儂らが作った鋳型で人民を再教育  儂らの原理を実行に移すにあたっては、諸兄が現に居住し活動しておる国々の人民の性格を考慮していただきたいのじゃ。儂らが作った鋳型で人民を... 続きを読む

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2001年07月10日

議定 10

群集には一種特別な癖がある どえりゃあこと仕出かすもんだぎゃ、大胆極まりないでかんわ!  本日は前の話と重複することから始めるが、記憶に留めていただきたいのは、各国政府と人民は政事のことは上辺だけしか... 続きを読む

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